2021.03.11 Thu
ISU ONLINETOPICS

学長メッセージ「東日本大震災から10年―鎮魂の祈りと感謝、次の10年に向けて―」


尾池学長 年頭の抱負
 10年前の2011年3月11日14時46分、東北地方太平洋沖でマグニチュード9.0の地震が発生しました、すなわち東日本大震災の発生です。この大震災でご逝去された犠牲者の方々への鎮魂を込めて心からご冥福をお祈り申し上げます。石巻専修大学でも6名の在学生が他界されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
 最大被災地に位置する大学として本学が取った対応、地域社会への貢献、ならびに課題等については、1年後の2012年3月11日から6年後の2016年3月11日に発行した「東日本大震災 石巻専修大学 報告書 第1号~第5号」にまとめています。大学ホームページから閲覧できますので、今後の備えとしてご一読いただければ幸いに存じます。
  
   ◆ 東日本大震災 石巻専修大学報告書(第1号~第5号)
   ◆ 復興共生プロジェクト
   ◆ 【東日本大震災10年イベント】3.11 竹こもれび(R3.3/11)
 さて、私事で誠に恐縮ですが、震災の当日、理工学部教員であった小生は石巻の大学には行かず、約50 km離れた仙台中心部の東北大学片平キャンパスで開かれていた日本航空宇宙学会北部支部主催のシンポジウムに出席していました。しかも正に自分の研究発表中で、そろそろやめないと司会者から注意されるかなと思った矢先、大自然から長大な警告を受けました。数分間に渡る長い揺れが収まったとき、会場内に残っていたのは、発表者と共同研究者の2名だけでした。その後屋外に退避しましたが、余震が一向に収まる気配もなくシンポジウムも閉会することが決まりました。15時半頃、近所に住む仲間2人と連れだって、南南西に約30 km離れた自宅を目指して歩き始めました。仙台中心部は停電のため一部の信号が機能せず車と人で渋滞状態でした。淡い期待を抱いてたどり着いたJR東北本線長町駅は暗く静まり返っており、JRも運行を停止したことを実感しました。その後は、雪にも、余震にも、津波にも、空腹にも負けずひたすら東北本線と国道4号に沿って南下し、21時半頃自宅に到着しました。ここでも淡い期待は裏切られ、ライフラインの途絶えた拙宅は陸の孤島と化していました。因みに、拙宅のある柴田町で電気が復旧したのは4日後、水道は12日後、インターネットは11日後でした。そのため、津波の被害を免れた本学が近隣住民の避難場所と災害対策拠点の一つとして活用されていることを確認できたのは4日後でした。水道が復旧した翌日の3月24日に遅きに失した感はありましたが、満を持して震災後初めて大学に顔を出しました。道中目にした津波の惨状は直視に堪えないものもありましたが、津波を免れた大学では建物自体の被害の少なさにちょっと安堵いたしました。

 その状況も踏まえて、5号館1階に石巻市社会福祉協議会の本部が設置され、グラウンドはボランティアの方々のテントで埋め尽くされるようになりました。その光景に復興への活力を感じたことを覚えております。協議会の記録によれば、総計で323のボランティア団体の登録があったとのこと、ボランティアの方々をはじめとして復興を支援していただいた一人ひとりの皆様に心より感謝申し上げます。

 大学本館の正面入り口のところに白い大理石のモニュメントがあります。このモニュメントは、東日本大震災で犠牲になった石巻専修大学の6人の学生をはじめ、卒業生や学生のご家族の皆様を追悼するために、彫刻家の久保健史さんに作っていただいたもので、日本語名は「明日のむこうには」といいます。ところで、「明日のむこうには」とは何を意味しているのでしょうか。単純に考えると「未来」ですかね、10年経った今では、次の10年に向けた未来でしょうか。本学は創立30周年を迎えた2020年を改革元年とし、今後10年を見据えた「中長期ビジョン」に基づく教育改革を進めています。現在進行中の第1次中期ビジョンでは、社会の諸課題解決に活用できる知識?技能を修得した人材を育成することを目指します。

中長期ビジョン(2020~2024年度)
1 社会の諸課題解決に活用できる知識?技能を修得した人材を育成する
2 教育研究活動を充実させる
3 学習の質を向上させる環境を整備する
 時代の変化と社会の要請に対応しつつ、建学の精神「社会に対する報恩奉仕」と21世紀ビジョン「社会知性の開発」に基づき、独自性を発展的に実現するため、2021年4月には経営学部に情報マネジメント学科を新設します。さらに、2022年4月を目途に、理工学部と人間学部の教育課程の新編を進めます。
これらの改編を持続的に推進することで、本学は、社会知性で地域社会を支える「地域に根ざして世界に尖がった大学」を目指します。そのために、学生の学びを活性化する実践的な教育と持続可能な改革を進めていく所存でございます。
 今後とも、皆様方のご支援、ご協力を賜りますよう心からお願い申し上げます。

                                                  2021年3月11日
                                                    石巻専修大学長 尾池 守
東日本大震災から10年03
東日本大震災から10年01
東日本大震災から10年05
東日本大震災から10年04
*震災当時の様子(学内グラウンドに設置されたテント等)