専修人の本_2021年度

2021年度 新刊紹介

専修人の本?宇都名誉教授著
ポーランド児童救済事業の記録 ―『波蘭児童関係日誌』一九二〇?一九二二年―
発売日 2022. 1.18
編 著 宇都榮子?小笠原強?村上葵ほか
発 行 彩流社
価 格 税込7920円
1920?22年、東京?大阪で765人のポーランド児童が救済された。第一次世界大戦とロシア革命後のシベリアには約5万人のポーランド人が在住。内戦や、飢餓?寒冷による親の死亡で、孤児が多数発生した。
波蘭児童救済会(1919年設立)は子どもたちを日本から米国または英国経由でポーランドへ帰国させる計画をたて、日本国内での救済を日本政府に依頼、その任を日本赤十字社が担った。
本書は、宿舎日誌『波蘭児童関係日誌』を初全翻刻し、さらに、日赤と孤児に宿舎を提供した福田会の機関誌、新聞雑誌等の本事業関係記事も初翻刻した。救済する側中心に検討している先行文献と異なり、日誌中心にほかの史料も紹介し、救済対象となった児童の生活面に迫り、国民からの同情(寄付金品)も紹介した。
専修大学関係著者(うと?えいこ)名誉教授。日本社会福祉史。(おがさわら?つよし)文学部助教。東洋史。(むらかみ?あおい)?文学研究科歴史学専攻修士課程修了。日本近世史。

専修人の本?小藤康夫教授著
私立大学の会計情報を読む ―成長の源泉を求めて
発売日 2021. 12.16
著 者 小藤康夫
発 行 創成社
価 格 税込2200円
私立大学は独自の理念と目標を定め、それに向かって邁進している。年度ごとに発表される活動報告書を読むことで、大学の運営状況がほぼ正確に把握できるようになっている。
それに対して大学の決算書は難解である。それでも大学を知るうえで重要な情報源なので無視するわけにはいかない。本書では複雑な会計情報をコンパクトに凝縮した独自の財務指標を作成し、大学の実態を分かりやすく説明している。
世間一般の物差しで大学間の比較といえば偏差値を取り上げる場合が多いが、ここではまったく別の視点からの比較が試みられている。財務指標に注目すれば、偏差値とはまったく違う姿が見えてくる。興味深い現象である。
著者( こふじ?やすお)商学部教授、金融論、金融サービス。
専修人の本?上田和勇名誉教授著
復元力と幸福経営を生むリスクマネジメント
発売日 2021. 12.14
編 著 上田和勇
発 行 同文舘出版
価 格 税込5390円
リスクは常に形を変えて繰り返され、関係者の成長が見られない、あるいは幸福感が醸成されない企業や組織の価値を減損に至らしめる。
こうした悪循環を断ち切るために、組織や企業はどのようにしてレジリエンス(危機からの復元力)強化とステークホルダーの幸福感醸成のために、リスクマネジメントを行うべきかという視点から書かれたのが本書である。
リスクマネジメント、保険論、経営学、法学など多様な視点から、日本リスクマネジメント学会およびソーシャル?リスクマネジメント学会の会員22人により、編著者の古稀記念を契機に執筆され、市販本として刊行されたものである。
編著者(うえだ?かずお)名誉教授。リスクマネジメント、保険論。
校友の本?雫井脩介著
霧をはらう
発売日 2021. 7.28
著 者 雫井脩介著(平3文)
発 行 幻冬舎
価 格 税込1980円
『火の粉』で裁判官を、『検察側の罪人』で検事を主人公に、重厚ながらもエンターテインメント性に富んだ作品を著してきた雫井脩介さん(平3文)。本作では、被告の無実を信じて戦う弁護士の姿を力強く描いた。
入院中の4人の子どもの点滴にインスリンが混入され、2人が死亡した事件で逮捕されたのは、生き残った女児の母親だった。警察の取り調べで一度は犯行を認めるも、その後は一貫して無実を主張。世間の注目を集める点滴死傷事件には、疑念という名の霧が深く立ち込める。
国選弁護団に加わった若手弁護士の伊豆原は「霧をはらう」ことができるのか。そして有罪率99?9%と言われる刑事裁判で無罪を勝ち取ることができるのか。公判前整理手続きが終了し、いよいよ裁判員裁判の幕が開ける作品終盤、形勢が二転三転するドラマチックな展開から目が離せない。
深い霧の向こうに伊豆原が、そして被告人の家族が見たものとは―。
作家デビュー20周年を迎えた著者の集大成と呼ぶにふさわしい渾身の法廷サスペンスを堪能してほしい。
専修人の本?黒沢教授著
ナポレオンの柳  西洋人と柳、墓地、ピクチャレスク
発売日 2021. 5.21
著 者 黒沢眞里子
発 行 彩流社
価 格 税込3300円
ナポレオンの柳は日本ではほとんど知られていないが、セントヘレナでナポレオンが瞑想し、死後、墓となった場所の柳の木に由来する。ナポレオンの死を告げた当時の記事には「柳とナポレオンの墓」の挿絵が添えられ、ナポレオンの死を人々の心の奥底に刻印した。
メランコリーな柳が枝を垂らす「ナポレオンの墓」のイメージが、国を超えて多くの人々の関心を呼び、絵に描かれ、語られ、歌に歌われ、さらに柳の強い生命力によって「ナポレオンの柳」は実際に、世界に広がっていった。セントヘレナを訪れた人々によって、柳の枝が挿木として持ち帰られ、世界に「ナポレオンの柳」が移植されたからである。柳は、人々があたかもナポレオンの「聖遺物」を得たかのように、物理的に持ち帰ることを可能にした。ナポレオンが終の住処で「柳」と出会ったことは、ナポレオンの叙事詩的生涯をしめくくる幸運な出会いだったと著者は考える。
著者は米国の墓地研究者として古い墓地を訪れ、多くの墓石に柳を見つけた。なぜ米国の墓地で多く目にするのか。その疑問が「柳」研究の出発点となった。 柳はそのしなだれた姿から、weepingwillowと呼ばれ、西洋では追悼?再生のシンボルとなった。
著者(くろさわ?まりこ)文学部教授。アメ リカ研究。
校友の本?上田まりえさん著
知らなきゃ恥ずかしい?日本語ドリル
発売日 2021. 7.14
著 者 上田まりえ ( 平21文)
発 行 祥伝社
価 格 税込825円
動画共有アプリ「TikTok」で人気の『上田まりえの日本語教室』が書籍化された。著者の上田まりえさん( 平21文)は元?日本テレビアナウンサーで、現在はタレント、ラジオパーソナリティー、ライターと、〝言葉のプロ〞としてマルチに活躍する。 
ドリルと銘打たれた本書には、「他人事は『ひとごと』『たにんごと』?」「雪辱を『果たす』『晴らす』?」など、読み間違いの多い言葉や誤って使いがちな表現がクイズ形式で100問収録されている。 
教養本にありがちな堅苦しさはなく、正しい日本語を楽しみながら学べる点が大きな魅力だ。各章末には軽妙なコラムも添えられ、読み物としても楽しめる。 「身だしなみや立ち居振る舞いと同じで、言葉はその人を表現する方法のひとつです」(本書より)。就職活動や商談など大事な場面で正しい日本語をスマートに使いこなせるようになりたい、そんな願いに応えてくれる一冊だ。
専修人の本?佐藤雅幸教授監修
ジュニア選手のための夢をかなえる「スポーツノート」活用術
発売日 2021. 8.2
監 修 佐藤雅幸
発 行 メイツ出版
価 格 税込1892円
勝敗がつきもののスポーツですが、負けは決して悪いことではありません。また、勝てばすべて良し、ということでもありません。
大切なのは事実をきちんと受け止めて次に向かってチャレンジすること。そこで生まれる感情を含めて論理立てて捉えれば、すべてが成長の糧になります。その手助けになるのが「書く」という作業です。自分の思いや取り組みをノートに書くことは、自分を客観視する能力が身につき、「心の整理整頓」につながります。
スポーツで成功を収めたアスリートや指導者は、さまざまな形で「スポーツノート」をつけています。サッカーの中村俊輔選手やフィギュアスケートの羽生結弦選手をはじめ、プロ野球界の名将?野村克也さん。さらに、元プロテニスプレーヤーの松岡修造さんも現役時代にノートをつけていた一人です。引退後は自身が行っているテニス教室である「修造チャレンジ」でも取り入れられています。
本書が、ジュニアアスリートのみならず、学生諸君のスポーツライフにも役に立てれば幸いです。
監修者(さとう?まさゆき)経済学部教授。スポーツ科学論、スポーツ心理学。
専修人の本(校友)花上氏著
横浜トライ! 横浜はなぜ世界のトライアスロンシティになったのか?
発売日 2021. 5.14
著 者 花上喜代志 ( 昭44法)
発 行 さいど舎
価 格 税込2090円
開港150周年を記念して、2009年に横浜でトライアスロンの世界大会が初開催された。同大会はその後、パラトライアスロン部門を加えて開催され、期間中は2日間で50万人近い観戦者を集めるビッグイベントに成長した。大会誘致をけん引したのは、横浜市会議員で、横浜市トライアスロン協会会長も務める花上喜代志さん。本書にはその舞台裏と競技の魅力が余すところなくつづられている。
華やかな表舞台とは対照的に、開催実現までは「いばらの道」だった。しかし花上さんらは「知恵を絞り、チャレンジ精神を奮い立たせて乗り越えてきた」(本書より)。横浜港の水質を不安視する声には、60歳にして水泳を習い、自ら山下公園前の海で泳いでみせることで安全性をアピール。このエピソードが象徴するように本書は、逆風が吹くなか大会の開催?発展に尽力した者たちの「挑戦(トライ)」の物語であり、胸を熱くする。
大会関係者や選手の証言も多数収録し、貴重な記録としての側面も持つ。地域活性化や環境保全、ダイバーシティなど多様なテーマを含む本書を通じて、大規模スポーツイベントが生み出す豊かなレガシーに触れることができる。
専修人の本?中垣教授著
日本の医療マンガ50年史
発売日 2021. 4.20
著 者 日本グラフィック?メディスン協会(編集) 中垣恒太郎
発 行 SCISUS
価 格 税込2200円
手塚治虫『きりひと讃歌』(1970年)から現在に至る日本の医療マンガ作品を100点、海外マンガを10点選出し、レビューとコラムを付した第一部と、マンガを医療現場で活用する実践例をまとめた第二部とによる構成。医療教育や臨床の現場でマンガをツールとして活用するグラフィック?メディスンの国際的な動向を参照し、文化資源としてのマンガの活用のあり方を展望し、医療人文学の可能性を探る。 
数量化からこぼれ落ちてしまいかねない層をも包括的に捉えようとするグラフィック?メディスンの概念に基づき、医療マンガを介護や障がいなどを含む領域として広く捉えることにより、マンガ文化の発展史と多様性、医療をめぐる現状と課題が浮かび上がる。日本グラフィック?メディスン協会代表を務める文学部の中垣恒太郎教授が責任編集を務めた。
筆者(なかがき?こうたろう)?文学部教授。比較メディア研究。
専修人の本?山田教授著02
法とジャーナリズム 第4版
発売日 2021. 6.15
著 者 山田健太
発 行 勁草書房
価 格 税込3300円
2021年通常国会では、プロバイダ責任制限法、デジタル改革関連法、少年法改正、土地利用規制法などが成立した。これらは、SNS規制、個人情報保護、少年犯罪報道の実名転換、住民の思想調査権限など、表現の自由に大きな影響があるものばかりだ。さらに今般のコロナ禍に関連しての私権制限も引き続き話題になっている。これら最新事情にもすべて対応した、国内最速の解説書であり、表現の自由のほぼ全領域をカバーした唯一の体系書でもある。
初版は2004年になるが、5年ぶりに全編リニューアル、特徴の左右ページ割り(左が基本事項、右が資料編)はそのままで、扱う法令?判例は300項目以上、事項項目は500を超える。学科?研究科学生の教科書用のほか、広く現場のジャーナリストや研究者にも好評を得てきたが、インターネット上の情報発信などの問題が山積しているいま、より広く一般の皆さんにもご一読いただければと思う。9月には姉妹書の『ジャーナリズムの倫理』も刊行予定である。
筆者(やまだ?けんた)文学部教授。言論法。
専修人の本?山田教授著01
愚かな風 ?忖度時代の政権とメディア
発売日 2020. 11.14
著 者 山田健太
発 行 田畑書店
価 格 税込2530円
主として沖縄地元紙?琉球新報の寄稿をまとめたもの。2008年から始まった連載はすでに160回を数えるが、本書は16年から20年の首相交代までを扱う。それ以前をまとめた前著『見張塔からずっと?政権とメディアの8年』と併せ読むと、表現の自由の後退状況が如実にわかる。
戦後のジャーナリズム状況は20年ごとに、構築(1945年?)、躍動(65年?)、挟撃(85年?)、忖度(2005年?)の時代にわけることができるが、巻末にはここ15年を中心に、戦後の言論表現の自由関連年表をつけ、より客観的に日本の「いま」を理解してもらえるよう工夫した。
筆者(やまだ?けんた)文学部教授。言論法。
専修人の本?山内教授共編著
沖縄企業の競争力
発売日 2021. 3.15
共編著 山内昌斗
発 行 文眞堂
価 格 税込2750円
本書は、地方に拠点を置く企業がどのように競争力を獲得していくのか、その方策を示そうとするものである。結論から述べれば、地域社会に眠る「知」を探索し、活用すること、社会的?文化的価値を持つそれらの「知」を経済的価値へ転換することが重要であると考えている。そして、それらを実現するための鍵を握るのが「両利きのマネジメント」であり、その学術的な意義と具体的な展開について、歴史的視点を交えて解説する。
筆者らは、企業、そして人が地域の活性化?地方創生の要にあると考えている。そして、地域社会の成長?発展に寄与する企業経営の在り方のなかに、経営の本質があるとみている。沖縄という場を研究対象とした書籍ではあるが、「経営とは何か」ということに疑問や興味をお持ちであれば、ぜひ一読いただきたい。
筆者(やまうち?まさと)経営学部教授。経営史。
校友の本(荒木田和子さん著)
「どうして私は」と落ち込んだら
発売日 2020. 12.7
著 者 荒木田和子(平元文)
発 行 Book Trip
価 格 税込1452円
著者の荒木田和子さん(平元文)は本学で心理学を学び、現在は臨床心理士として活躍する〝心のケアの専門家〞。福祉?医療?産業領域での長年にわたる臨床経験をもとに、多くの現代人が漠然と抱く「生きづらさ」をテーマにした本書を上梓した。
著作のなかで荒木田さんは、生きづらさの正体とは「今の私」と「こうありたい私」のギャップであると指摘。理想を求める気持ちが強過ぎると生きること自体が苦しくなると述べ、誰でも簡単に取り組める「心のストレッチ」を推奨する。第4章では「欲張りを認める」など、理想で凝り固まった心をほぐす10のエクササイズを紹介している。
そのほかにも、自己理解を深めるための「私のトリセツ」づくりをはじめ、実践的な内容が多い点も本書の特徴のひとつ。読み進めることでプロのカウンセリングを受けているような、心晴れる体験が得られる一冊である。
専修人の本?宮嵜教授著
値段がわかれば社会がわかる?はじめての経済学?
発売日 2021. 2.8
著 者 徳田賢二
発 行 筑摩書房
価 格 税込902円
経済学は面白い。本書は、私たちの身近な生活の疑問を興味深く、分かりやすく解き明かしてくれる。
私たちの身近にあるお店の値札の「値段( 価格)」はどうつけられるのか。高校時代の公民では、抽象的に「価格は、需要と供給が一致するところで決まる」と学んでいるが、値段とは、生産から消費まで、多くの人々の経済活動を通じて初めて決まってくるもの。現実には、生産者が商品を市場に出荷し、市場で競りなどを通じて市場価格が決まり、さらに小売店で販売する値段を決め、最後に私たち消費者がその値段を評価して買うかどうかを決める。その長い価格決定のプロセスを、ビジネスに関わる基礎的な知識で解き明かしていく。
今後の経済学、マーケティング、経営学、ビジネスといった専門知識への良き導入役になってくれるだろう。
著者( とくだ?けんじ)名誉教授。流通経済論、地域経済論。