三枝令子ゼミナール
ゼミナールについて
- — まずはじめに、三枝ゼミの活動内容を教えていただけますか。
- 日本語学と日本語教育学の関わりという視点から、ことばについて気づいたことを拾い出し、どうしてそういう使い方があるのかを一緒に考える活動をします。
- 日本語学の多くのことがらには、すでにそれについて考えた人がいます。それらの先行研究を読み、日本語の問題について深く考えるための基本的な姿勢を身につけます。さらに、人にわかりやすく説明して、納得してもらえるプレゼンテーション?論文執筆の能力を養っていきたいと思います。
- 基礎的なことをある程度学んだら、先行研究にとらわれず、自分の興味関心を大切にしてことばについて考えていきましょう。ことばの今まで気づいていなかった構造、ことばの可能性や制約を知ることは、人間について知ることにつながる、とても面白いことなのです。

授業について
- — 次に、先生の担当されている授業について教えてください。
- ゼミ以外では、「日本語教育実習A」「入門ゼミナール」、それに留学生向けの「日本語文章表現1」「日本語文章表現2」を担当しています。
- 「日本語教育実習A」では、非母語話者による日本語学習を支援するための基礎的な知識や指導上のテクニックを習得することを目標にしています。実際の日本語教育の場面で問題になりやすい点を取り上げ、その解決のための指導方法を学びます。また、模擬授業や授業見学を通じて、日本語教育の具体的な教室活動の中で何を考えるべきか、議論していきます。
- 「入門ゼミナール」では、2年時以降のゼミへの導入として、基本的な日本語学の文献を読み、日本語学の全体像をつかみます。

研究について
- — それでは、先生のご研究について教えてください。
- 興味と必要に応じて、いろいろなことに取り組んできました。
- 今関心を持っていることのひとつは、「介護のことば」です。経済連携協定(EPA)によって、2008年以降、インドネシア、フィリピン、ベトナムから、看護師?介護福祉士の候補者が数多く来日しています(たとえばこちら を参照)。この人たちは、来日後4年で日本の介護福祉士国家試験に合格しなければなりません。そこでネックになるのが、日本語能力です。日本語の能力が足りないために国家試験に合格できないという事例が後を絶ちません。
- 介護福祉の現場で必要となる日本語とは、一体どのようなものなのか。日本語学?日本語教育学は、それをどのように支援していけるのか。外国人を働き手として受け入れるなら、こういった日本語の問題も考えていかなければならないのです。
- また、ずっと興味を持ち続けているのは、日本語の文法です。書きことばよりは、話しことばの使い方に関心があります。そこには、これまでの文法ルールだけでは説明しきれない様々な要素がからんでいるからです。
- たとえば、人に自分の知人を紹介するとき、日本語では「彼のお父さんは大学の先生をしているそうです」と言えます。でも、ドイツ語やタイ語では、その人が現に目の前にいるのに「~そうです」を使うと、話の内容(この場合は、彼が言った「大学の先生であること」)を疑っているという意味になります。これらの言語の中では、「~そうです」は、元の話し手がいないところで使われるものだからです。
- 日本語の文法を日本語だけで考えるのではなく、さまざまな言語との比較?対照を通じて、その特性を明らかにしたいと考えています。


メッセージ
- — 最後に、足球365比分_365体育投注-直播*官网や在学生にメッセージをお願いします。
- 私自身がそうでしたが、人の意見をうのみにせず、自分で考えるというのは難しいことです。でもそれを身に付けないと、何のために自分の存在があるのかわからない。「どうしてそうなのか」という疑問を持つことを大切にして、いっしょに考えていきたいと思います。

三枝 令子 (特任教授)
1979年東京外国語大学大学院日本語学専攻修士課程修了、同年、ウィーン大学日本文化研究所専任講師。筑波大学、東京外国語大学等での非常勤講師を経て、1989年から一橋大学助教授、1995年から教授。2014年一橋大学定年退職。2017年から専修大学文学部日本語学科特任教授。博士(学術)。趣味はスキー、山登りなど。
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